LIVE is CATCH BALL
私の住む春日井市の文化会館には、毎年夏に歌舞伎役者がやって来る。團十郎に海老蔵、勘三郎に七之助といったお馴染みの人気役者たちを見れる格好のチャンスに足を運んできた。今年は、2007年のNHK大河ドラマ「風林火山」で武田信玄を演じた市川亀治郎さん。立役も女形もこなす若手実力派だ。
舞台から観客に挨拶を述べる「口上」は、役者の人柄も垣間見れて楽しみのひとつだ。亀治郎の口上の、明朗でわかりやすい語り口に一気に引き込まれた。きっと聡明な人なんだろうなあと魅せられた。しばらくして、基礎学力を競うクイズ番組を偶然見たら、亀治郎が最優秀賞に輝いていた。そのときの涼やかな着物姿の、爽やかな色香にどきりとした。知性と色気のある男に弱いのだ。
「舞台は、観客と役者のエネルギーのキャッチボール」。口上の中でそんな言葉があった。観客が声を上げる、手をたたく・・・それに応えて役者は奮起する。その日その時その場にいる両者のエネルギーが行き交う舞台に、同じものは二度とない。それがライブの醍醐味なのだ。
今年の夏、サザンオールスターズの30周年記念ライブに行った。純な多感さを抱えた少女の頃からせつなさを覚えた大人になるまで、サザンの音楽と過ごした時間は計り知れない。これまで幾度かのライブで、「同じ時代に生きててほんとうによかった!」と心からの幸福感に包まれた瞬間は、宝物だ。
サザンはしばらく休業する。桑田さんは、このライブ後のインタビューで「粛々とライブをやるつもりだったが、休業宣言で予想外に世間が大騒ぎになって、そうはいかなくなった。だからサザンの王道を直球勝負でいった。それを許してもらえたライブだった」と振り返っていた。
30年分のあふれる愛と感謝の思いを、私も一曲一曲に入魂して投げ返した。
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