たまにはココロの栄養補給にと、月に一度位、お芝居やコンサートに出かける。この夏は幸運にも2度、至福のひとときを味わった。
一つは、歌舞伎。地元春日井市に市川海老蔵がやってきた!昨年、東京歌舞伎座で市川新之助が11代目海老蔵を襲名。その後大都市の劇場をまわり、フランスでの襲名披露公演も話題になった。今回は全国53ヵ所の公立施設をまわる巡回公演。よくぞこんなところまで来てくれた!と思っている全国津々浦々の人たち、きっといっぱいいるだろうな。公立施設だからチケット代もお値打ち。
歌舞伎は2度目の初心者。楽しみは、襲名披露の「口上」だ。3部構成の第2部の幕が開けると、一門がずらりと裃姿で威儀を正して並んでいる。昨年白血病で倒れ、復帰を果たした父の團十郎が、「海老蔵と團十郎が一緒の舞台に立つのは天保以来150年ぶりでございます」と言うと、客席から「ほおーっ!」という感嘆の声。市川團十郎という家は江戸の歌舞伎界の象徴で、さまざまな特権を認められた別格の家だったとか。一門の先輩たちが順々にお祝いの言葉を贈り、最後に海老蔵がさらなる飛躍を誓った。神聖ですがすがしい儀式に会場も華やいだ。
海老蔵は「声よし、顔よし、姿よし」の三拍子揃った歌舞伎界きってのスターだが、やはり魅力は目力だ。かっと見開いて見得を切る目も迫力だが、流し目の色気もたまらない。美しさに息を呑むことたびたびだった。
もうひとつは、三島由紀夫原作、蜷川幸雄演出、藤原竜也主演の舞台「弱法師(よろぼし)」。これまで国内外で上演され、この7月にはニューヨークでの招待公演も行われた。
東京大空襲で失明し、両親と生き別れた美少年を演じる藤原竜也君。前から2列目・中央座席のかぶりつき、コロンのいい香りも漂ってくる。終盤、炎に目をやかれたときに見たこの世の終わりの幻影に襲われる場面では、シャツを脱ぎ捨て、しなやかな肉体を披露。キラキラ輝く汗に目を奪われてしまった。物語の世界に引き込む迫心の演技は鳥肌もの。テレビでは見られない魅力を放つ舞台俳優としてますます楽しみだ。
(浦沢) |